2008年12月21日

第55話 空一面のヒゲ

ほとんどあてのない行軍であるし、

風も強くなってきてるので、義兵達はふらふらだ。

腹が減っては戦は出来ぬということで、

ぼちぼち野営をする。

あたりはすでに真っ暗だが、

用心の為に森というか草むらというか、

俺達五百人ほどが身を隠せるところで陣を張る。

旗揚げ時に強奪した食料はとっくに尽き、

幽州から発つ時に踏み台から少し分けてもらったが、

とてもじゃないけど足りそうにない。

今日も水っぽい味気のない野菜汁だ。

早くこんなひもじい生活から抜け出したいのう。

部下に命令し火を焚く。

火を見ると不思議と落ち着く。

やはり暖かいのはいいもんだのう。

これで酒と肉があればいいのだが、

贅沢は言ってられない。

俺の横に丸々と肥えた豚が一頭いるが、

こいつを食うわけにもいかぬ。

まがりなりにもペットだからな。

今のところ豪傑ぶりを発揮して案外役に立ってるし。

傲慢ヒゲはその自慢のヒゲを種火にでも使わせてもらうか。

怒り狂うだろうけどな。。。

さーて腹も膨れたし、今日はここで夜営するぞと下知を出し、

俺も眠りにつく。

最近動きっぱなしだったのですぐに深い眠りに就いた。

・・・・・

熱い。

熱い熱い熱い!

そして息が出来ない。

夢か?

いや違う。周り一体が火の海だ。

他の兵士たちも異変に気づき慌てふためいている。

消火する水も無いし、これはもう手が付けられない。

目につく荷物だけをまとめて一目散に逃げる。

とりあえずここから離れないと死んでしまう。

見張り番は一体何をやっていたんだ?

きっと寝ていたに違いない。

見張り番を引っ立てよ!と逃げながら叫ぶ。

誰も返事がない。

あ〜そりゃそうだ。

正式に決めてなかったからな。

これは俺の責任になるな。

ヒゲは冷たい眼で俺を見てやがる。

図々しい奴は大きいため息をつく。

そりゃあ俺が悪いけどな、

見張りを立てないのに気付かないお前らも同罪だぞ。

一応義兵の中では責任者なんだからな貴様ら。

少しは自覚を持てよ怠け者めが。

しかし豚だけが俺を慰めてくれた。

失敗は誰しもあるから気にしなーいブフォホホホホホ、と。

お前・・・・いい奴だな。

涙が出そうになったので一人馬を走らせる。

畜生。

誰も追ってこない。

俺の人望ってこの程度なのか。

さらに馬を走らせ寂しく振り返ると、

折からの強風のせいで辺り一面火の海だ。

空も赤黒く光っている。


まるでヒゲの薄汚い顔のようだった。



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posted by うさんく斎 at 00:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第二章 黄巾賊討伐編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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