風も強くなってきてるので、義兵達はふらふらだ。
腹が減っては戦は出来ぬということで、
ぼちぼち野営をする。
あたりはすでに真っ暗だが、
用心の為に森というか草むらというか、
俺達五百人ほどが身を隠せるところで陣を張る。
旗揚げ時に強奪した食料はとっくに尽き、
幽州から発つ時に踏み台から少し分けてもらったが、
とてもじゃないけど足りそうにない。
今日も水っぽい味気のない野菜汁だ。
早くこんなひもじい生活から抜け出したいのう。
部下に命令し火を焚く。
火を見ると不思議と落ち着く。
やはり暖かいのはいいもんだのう。
これで酒と肉があればいいのだが、
贅沢は言ってられない。
俺の横に丸々と肥えた豚が一頭いるが、
こいつを食うわけにもいかぬ。
まがりなりにもペットだからな。
今のところ豪傑ぶりを発揮して案外役に立ってるし。
傲慢ヒゲはその自慢のヒゲを種火にでも使わせてもらうか。
怒り狂うだろうけどな。。。
さーて腹も膨れたし、今日はここで夜営するぞと下知を出し、
俺も眠りにつく。
最近動きっぱなしだったのですぐに深い眠りに就いた。
・・・・・
熱い。
熱い熱い熱い!
そして息が出来ない。
夢か?
いや違う。周り一体が火の海だ。
他の兵士たちも異変に気づき慌てふためいている。
消火する水も無いし、これはもう手が付けられない。
目につく荷物だけをまとめて一目散に逃げる。
とりあえずここから離れないと死んでしまう。
見張り番は一体何をやっていたんだ?
きっと寝ていたに違いない。
見張り番を引っ立てよ!と逃げながら叫ぶ。
誰も返事がない。
あ〜そりゃそうだ。
正式に決めてなかったからな。
これは俺の責任になるな。
ヒゲは冷たい眼で俺を見てやがる。
図々しい奴は大きいため息をつく。
そりゃあ俺が悪いけどな、
見張りを立てないのに気付かないお前らも同罪だぞ。
一応義兵の中では責任者なんだからな貴様ら。
少しは自覚を持てよ怠け者めが。
しかし豚だけが俺を慰めてくれた。
失敗は誰しもあるから気にしなーいブフォホホホホホ、と。
お前・・・・いい奴だな。
涙が出そうになったので一人馬を走らせる。
畜生。
誰も追ってこない。
俺の人望ってこの程度なのか。
さらに馬を走らせ寂しく振り返ると、
折からの強風のせいで辺り一面火の海だ。
空も赤黒く光っている。
まるでヒゲの薄汚い顔のようだった。
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