2008年11月15日

第20話 傲慢なヒゲ

くそっ。

関羽こと赤顔のヒゲの迫力に酒が喉を通らない。

微妙な空気が流れる。

若い頃に隣村の女の子たちと宴会をした時と同じ空気だ。

自己紹介しようにもなかなか言葉が出ない。

おい豚。

お前の知り合いならお前が盛り上げろよ。

一人で酒ばっか飲んでんじゃねーよ。

よく人殺したばっかで食べたり飲んだりできるよな。

単細胞の豚はこれだから困る。

ヒゲは目線を下にして悠々と飲んでるし。

久々に冷や汗をかいたぞ俺は。

すべて豚のせいだ。

すると酒で濡れた髭に手をやりながらヒゲが口を開いた。

義兵に入るおつもりか?と

いやいやいやちょっと待てよ。

何言ってんのこいつ。

まずは自己紹介だろうが。

なーにを偉そうにいきなり人に質問してんの?

ははーん。

お前こういう場に慣れてないんだろ。

友達いなさそうだもんな。

単細胞なのに見栄張ってんじゃねーよ。

第一義兵志願じゃねぇし。

未来の軍師様だぞ俺は。


そのヒゲ引っこ抜いてやろうか?


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posted by うさんく斎 at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一章 桃園の誓い編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2008年11月16日

第21話 ヒゲは嘘つき 

仕方なく俺が先に自己紹介してやった。

天下太平の為に雌伏の時を過ごしている

軍師こと劉備玄徳だと。

とたんにヒゲの顔色が変わる。

いや赤い顔だからよくわからんけど、

目の色が変わったというか。

ヒゲはすごく驚いていた。

何故劉氏を名乗る者がこのような所にいるんだと。

そんなこと言われたってわかんねぇよ。

働くのめんどくさいからに決まってるだろ。

お前こそこんなとこで何してんだよ。

さっさと話せよこのヒゲ。

関羽は俺より少し年上で

故郷で塩商人やら講師をしてたらしいが、

故あってこの地に流れ着いたらしい。

このヒゲ絶対怪しいな。

こんな外見で商人とか講師とかはありえねぇ。

なんか悪さして故郷から逃げ出したに違いない。

俺は騙されないぞ。

関羽って名前も偽名かもな。

関羽の兄貴は俺より強いんだぜぇ。

なにより頭もいいしな。

突然あの豚が会話に入り込んできた。

今更遅い。


空気読め豚。


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posted by うさんく斎 at 00:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一章 桃園の誓い編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2008年11月17日

第22話 踏み倒し

この豚より強い?頭もいい?

ふむ。

これは利用できるかもな。

豪傑なら張飛を押さえつけられるだろうから、

暴走してもうまく治めてくれるかもしれん。

ただ強そうなヒゲは俺についてくるだろうか。

何よりこの嘘つきの悪人ヒゲ野郎は信用できんしな。

さぁどうする俺。

ピーンと来た。

俺のご先祖を明かせばいんだ。

信じてくれなかったら母ちゃんにも言ってもらおう。

講師してたぐらいなら理解できるだろう。

そうして俺はかの劉勝の末裔だと明かした。

すごいんだぞ俺は!

ただの子孫だけどな。

豚はキョトンとしている。

しょうがない、単細胞の豚だもんなお前。

肝心のヒゲは微動だにしない。

どうした?信じないのか?

ガタンっ

いきなり立ち上がって食堂を飛び出すヒゲ。

俺と豚も続く。

劉備殿の家はどちらか?

とヒゲが聞くので、

しぶしぶ教えると一目散に俺の家に入っていった。

なんなんだと豚と顔を合わせながら付いていく。

そして気づいた。

酒代を踏み倒してしまった。


後で倍にして返すから許せ。



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posted by うさんく斎 at 00:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一章 桃園の誓い編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2008年11月18日

第23話 人生損した

勝手に人の家に乗り込んだヒゲが、

なにやら母ちゃんと話している。

必至に女を口説いてるようにも見えるな。

ほんとに劉勝の末裔かどうか聞いているらしい。

お前やっぱり信じてなかったんだな。

俺にちゃんと確かめる前に母ちゃんに聞くなんて失礼なやつだ。

そういう性格は嫌われるぞ傲慢ヒゲめ。

母ちゃんは話を理解したらしく、

奥に引っ込んで古ぼけた木箱を持ち出してきた。

まさかと思うが食いもんじゃねーよな。

母ちゃんが取り出した箱の中身は、

なんとも美しい宝石が散りばめられた一対の宝剣だった。

これは我が家に代々伝わる秘宝、雌雄一対の剣。

志持つ者が一族に現れたら、

この剣を持たせて天下の為に戦う掟。

と母ちゃんが誇らしげに言う。

ほんとにマジ顔でのたまった。

やめてくれ母ちゃん…

いや仮にそれが本当の話だとしても、

俺に一言いわせてくれ。

これ売れば草鞋編みに精進しなくても

よかったんじゃねーか?

そうすればもう少しいい生活が出来てたと思うし、

売った金を役人に掴ませれば、

俺もいい職に付けたかもしれん。

母ちゃん、袖の下ぐらいしてかないとなこの世の中。


あーなんか23年間損した感じだわ。


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2008年11月19日

第24話 良き日にイザコザ

ともあれ、すっかりヒゲと豚は信じている。

今こそ立ち上がる時だと二人が叫ぶ。

ほんと単細胞だな。

しかし、豪傑の二人が仲間になり俺は劉勝の末裔。

そしてこの雌雄一対の剣があればいいところまでいけそうだ。

お前たち俺の手足になってしっかり働いてくれよ。

俺の言うことを素直に聞くだけでいいんだぞ。

いい日取りを決めて決起集会を行うことになった。

場所は近くの村の豚んちの桃園。

なんでこんな豚が立派な桃園を有しているのだ。

ただの農民じゃなかったのか?

ふん。

どうせ他人から奪った土地に違いない。

いつか白状させて俺が没収してやろう。

豚の分際で偉そうに。

お前にゃ納屋が似合ってる。

そんなこんなで噂を聞きつけた村民たちが、

タダ酒にあやかろうと集まってきた。

さぁ宴会のはじまりだ。

かわいい子いないかな?

と思った矢先、庭の片隅でヒゲと豚が言い争ってやがる。

お前ら…なんでこんな日に喧嘩してんだ。

この単細胞共め。

仕方なく仲裁に入ると、

豚が井戸に隠していた高級肉を

ヒゲが兄貴ヅラして奪おうとしたらしい。

こんなところに隠すほうもアレだが、

やはり関羽は油断ならない男だ。


この泥棒ヒゲめ。



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posted by うさんく斎 at 00:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一章 桃園の誓い編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2008年11月20日

第25話 無理難題

関羽と張飛はすでに義兄弟。

だから少しぐらい反目しあっても問題ないか…

しかしこのヒゲは要注意だな。

少し頭がよくて剛腕だからって

少々天狗になってるかもな。

傲慢で自意識過剰な奴なんて誰も付いて来ないぞ。

いつの日か罰が当たると思う。

まぁ俺が出世した後ならそれでもかまわんが。

にしてもこの劉備の下で仲間割れは許さん。

いつかビシっと誰かに言ってもらおう。

君主危うきに近寄らずだしな。

こうしてこの場は上手く収拾できたが、

後ろでこのイザコザを見てた母ちゃんが

思わぬことを口にした。

関羽殿と張飛殿は義兄弟なんだからあなたも加わりなさい。

・・・

正直こんなむさ苦しい奴らと兄弟になりたくない。

しかしこの俺が長兄というなら別だ。

泥棒ヒゲには任せられないし、豚はなおさらだ。

年長のヒゲは納得していないようだったが、

母ちゃんがうまく説得してくれた。

どうもヒゲは母ちゃんに気が、、、、あるわけないか。

まぁこれでますます命令しやすくなったわけだ。

母ちゃんありがと。

「我ら三人、姓は違えども兄弟の契りを結びしからは、
心を同じくして助け合い、困窮する者たちを救わん。
上は国家に報い、下は民を安んずることを誓う。
同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、
願わくば同年、同月、同日に死せん事を!」と、

無理難題なことを誓わされ俺たちは義兄弟になった。

んなこと誓わされてもなぁ。

先にお前らが死んだって、


俺は死ぬつもりないからな。



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posted by うさんく斎 at 00:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一章 桃園の誓い編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
2008年11月21日

第26話 略奪は天命

こうして色々あったがめでたく?儀式を終え、

早速俺はヒゲと豚に初命令を下す。

このまま劉焉の所に三人だけで行っても、

門前払いされる可能性がある。

いくら俺が劉勝の末裔でも

聞いてもらわなければ意味がない。

だからここにいる村民たちを徴兵することにしたのだが、

なにぶんただの農民ばかりなせいか、

みんな腰が引けている。

情けない野郎どもだ。

そこで初命令として豚に脅迫させて

無理やり徴用してやった。

泣き叫ぶ者もいたが、これもまた天命よ。

安心しろ、俺についてくれば間違いないぞ平民ども。

そしてヒゲには武器やら軍馬などを手に入れるために、

片っぱしから略奪させて軍備を整えた。

ついでに通りすがりの商人、張世平と蘇双からも頂戴してやった。

ヒゲは略奪しながらも怪訝そうな顔をしてたが、

大志の為と偽って納得させた。

俺の口先三寸にかかればヒゲといえども叶わないな。

こうして俺は役に立ちそうに無い雌雄一対の剣、

関羽はやたらでかい青龍偃月刀、

張飛は鍛冶屋が失敗したのかボコボコの槍を手に勝鬨を上げる。

豚はかなり動揺しながら

失敗したんじゃねぇ、これは蛇矛だからぐにゃぐにゃなんだ!

と言い張っているが、

これは無いだろ。

どうみても使いにくいぞソレ。

ともかくこれで俺の出世の旅が始まったわけだ

目指すは劉焉の待つ幽州だ。

軍師様のお通りだぜ。


首を洗って待ってろ、劉焉さんよぉ



第一章 桃園の誓い編 完

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posted by うさんく斎 at 00:03 | Comment(1) | TrackBack(0) | 第一章 桃園の誓い編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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